タイ料理を食べに【食暮エッセイ vol.4】
18時50分
お仕事の帰りーー
「晩ごはん、何にしようかな」
そんなことを考えながら、一人夜道を歩く。不意にエスニック料理が食べたくなったけれど、今から食材をそろえて家で作る余力はないなあと、他のメニューを考えてみる。
最近引っ越してきたばかりの家には、使い慣れた調味料も材料もほとんど揃っていない。「そんなこと、ただの言い訳だなあ…」と思いながらも、今の私にとって、一度に全てを揃えることは、どうしてもむずかしい。
最近は「一つずつ、丁寧に」ということを心掛けているんだった。
そんなことを考えながら歩き続けていると、少し奥まったところに、タイ料理屋さんを発見。
「入ってみようかな…」
入る前に悩むかと思いきや、気づいたらドアに手をかけ、お店の中へと進んでいました。
普段なら「やっぱりお家で食べようかな」と一旦止まって考えるのですが、この日は違いました。
悩む間もなく、気づいたらお店の中に入っていたのです(笑)
店内の壁には、異国を漂わせるポスターがいくつも貼られていました。アジアを感じるような独特な香り、ガヤガヤとした店内。日曜日の夜、お客さんで賑わっていました。
数えきれないほどのメニューに、麺やお米の種類、具材のオプションも沢山あり、どれも美味しそうなものばかり。色々悩んだ末に、米麺のトムヤムクンを注文しました。
10分ほどして、お店の方が料理を運んできてくれました。お野菜たっぷり、ボリューム満点の一皿。
辛くて、じんわりと汗をかくようなスパイスの配合は、すごく好みのものでした。
「おいしい…!!」と思わず言ってしまいそうでしたが、一人だったので、心の中だけに。
誰にも感想を言えないけれど、「ん~おいしい!」となるあの感覚。誰かに共有したいけれど、言葉に出せないから一人で思う存分おいしさを味わうもどかしさーー
それが、たまらないのです。
どうしても伝えたくて、お会計のときに「おいしかったです…」と伝えてドアへ向かいました。
ドアを閉めようと振り返ると、笑顔がすてきな店員さんが「ขอบคุณ ค่ะ ! (コープクン・カー)」と挨拶をしてくださりました。
とても幸せな、お腹も心も満たされた夜でした。
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