2025-11-28

金木犀のオムライス

 

金木犀の香りをすーっと吸いこむ11月。

例年、10月下旬には咲き終えるという金木犀。今年は暑さがつづいたからか、蜜のように甘い香りが11月までつづいている。

 

オムライスを食べに喫茶店へ向かった。午前中の在宅仕事を終えて、家の中で無性に、オムライスを食べたくなった。真黄色のふんわりたまご、ケチャップライス。どうしても食べたくなって、外に出る支度をした。

 

 

青い空、秋晴れが心地のいい季節。
ひんやりと冷たい風を浴びながら、近所の喫茶店へ向かった。

心地よく流れている店内のBGM60代ほどの男女3人組が近くのテーブル席に座っている。少し経ってから、常連さんと思われるご年配の女性が、スタスタと店奥へ歩いて行った。

 

私はオムライスを頼んだ。
セットの冷たい珈琲も注文した。前にも、無性にオムライスを食べたくなって、喫茶店へ行った日のことを思い出した。

 

そのときに綴ったWEBサイトのブログをみると、ちょうど一年前の11月だった。私は一年に1度、オムライスを食べたくなる時期が来るのだろうか。面白いなあと、頬が緩んだ。

最後にオムライスを食べたのが、一年前ということになる。あっという間、とは思わなかった。ちょうど一年くらいだなと思った。

 

 

オムライスがテーブルに運ばれてきた。薄く、きれいに均等に焼かれた卵の中に、ケチャップライスがぎっしりと詰まっている。上からは、つやつやのデミグラスソースがたっぷり。

何十個、いや百個以上のオムライスを作られてきたのだろうなあと、その一皿を目にした瞬間、思った。

スプーンですくって、大きなひと口。

「わあ……」

思わず目をつむって、オムライスの世界を堪能した。オムライスという、ボリュームのある、ガツンとした一皿なのに、どこか謙虚で控えめだった。

見た目も、味も、繊細でやさしい。包まれるような一皿だった。

可愛らしいブルーの小花柄の平皿に、美しいオムライスの姿。キッチン奥で作っている方の姿は見えなかったが、きっと、繊細で真面目な方なのだろうと姿が浮かんだ。

 

 

お会計のとき、奥のキッチンが見えた。60代くらいの男性の、静かな背中がみえた。奥さんがホールで、旦那さんがキッチンを担当しているのだろう。

その背中からは、オムライスを食べた時に感じた。謙虚で控えめな、でもまっすぐで優しい強さを感じた。料理は、作る人を表しているのだなあと、改めて思った。

もしも、来年の11月に意図せず「オムライスを食べたい」と思うことがあったら、11月はオムライスの月と認定しよう。

 

 

 

 

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